■ 証券会社は部署によって態度が違う
IPO(上場)を目指すときには、最低1つの証券会社と仲良くしなければならない。
これを主幹事と呼ぶが、これが決まらなければIPO(上場)はできない。
ところが、この証券会社との付き合い方が意外に難しい。
証券会社には、2つの顔があるからだ。
1つ目が、IPO(上場)するときに、実際に株式を投資家に売りさばく営業部門。
証券会社はIPO(上場)したい会社も顧客だが、その株式を売る先も顧客になる。
つまり、顧客と顧客をつなぐ、ブローカー。
彼らはブローカーとして、IPO(上場)する会社と投資家から手数料をもらう。
営業部門にとって重要なことは、売るべきより良い商品を見つけること。
商品がなければ、営業部門の売上は上がらない。
2つ目が本当にIPO(上場)しても問題ないかを審査をする部門。
IPO(上場)した後に不祥事が起これば、いきなり株式を買った自分の顧客が損をしてしまう。
そのために、IPO(上場)する会社の内部資料を徹底的に調査する。
証券取引所に対しても、いつでも不祥事が起こす会社の主幹事というレッテルを貼られたくないという理由もある。
そこで、少しでも問題を見つけると、主幹事を降りてしまう。
このように考えると、審査部門と営業部門は考え方がまったく違う。
この2面性からIPO(上場)しようとする会社とトラブルになることもあるので注意が必要だ。
まず、IPO(上場)を目指す会社の社長が会うのは、証券会社の営業部門の人たちだ。
営業部門は売る商品を見つけることも仕事。
しかも、証券会社同士で業績がよりよい会社の主幹事を取りたいという競争もある。
すごく積極的で、営業トークもうまい。
「この決算書であれば、弊社にお任せ頂ければ、最短でIPO(上場)が絶対にできます。審査部門にも一番にプッシュします」
と言われたら、社長も悪い気はしない。
IPO(上場)を何度もやる社長は本当に少ない。
つまり、ほとんどの社長がIPO(上場)の準備なんて初めて。
証券会社の営業部門の人たちもウソを言っているわけではない。
「もらった資料からだけ判断すれば」という限定つきで話をしているだけ。
そのため、証券会社とコンサルティング契約をするだけで、将来のIPO(上場)が約束されたと勘違いしてしまうのも仕方がない。
ここまでは、誰にも落ち度はないし、悪気もない。
そして、このまま何の問題もなく、IPO(上場)できる会社もある。
ただ、ほとんどの会社が、審査部門が出てきたときから証券会社の態度が変わったと感じ始める。
審査部門は、自分たちのチェック漏れでIPO(上場)した後に、株価が急落すれば責任問題になる。
すごーく慎重で、保守的な部門。
どんな会社でも、審査部門からダメな部分を最低1つは指摘される。
そこが修正できなければ、主幹事はできないと言い始める。
IPO(上場)のスケジュールもドンドン伸びていく。
ここで、IPO(上場)を目指す会社が折れて、信頼が回復すれば、そのまま主幹事は変わらない。
しかし、証券会社への不信感が高まると、違う証券会社に替えてしまう会社もある。
ただ、主幹事の証券会社が決まってから、最低半年なければIPO(上場)できないという内規を決めている証券取引所も多い。
そのため、IPO(上場)の延期は決定的だ。
もちろん、証券会社を変えたことで、うまくIPO(上場)できた会社も現実にはあるのだ。
ここで、重要なことは、証券会社の言っていることを、そのまますぐに受け止めないこと。
最初の1回、2回の担当者とのミーティングでの思い込みが、IPO(上場)までの道のりを1年、2年と長くしてしまう。
IPO(上場)が遅れることで、メリットは何もない。
絶対に、社長自らが証券会社の担当者と会うこと。
いろいろな証券会社と会って、担当者とよく話しをすることが重要。
これが、IPO(上場)を任せられる証券会社と出会うことができる秘訣だろう。
(監修 公認会計士 青木寿幸)
投稿又は更新日時:2007年01月29日 18:31
トラックバック
このエントリーのトラックバックURLは、http://www.kabuvalue.com/mt/mt-tb.cgi/71になります