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■ 事業計画書は簡単には作り直せない

あなたがIPO(上場すること)を目指すときに、まっさきにやることは事業計画書を作ること。
事業計画書とは、会社の事業の説明とそれを数字として表したものを指す。

本当は、IPO(上場)を目指さなくとも普通は作るべきなのだが、未公開会社の場合には社長の頭の中だけにあることが多い。
理由は、ドンドンこの事業計画書が書き直されていくからだ。

ただ、イメージだけで文章化されていないのでいい加減。
社員に「あれやっとけ」と命令しておきながら、すぐに忘れてしまう。
そのため、本当は儲かるチャンスがあっても、それを見逃すことが多い。
未公開の場合は、それでも許される。

一方、IPO(上場)するときには、絶対に事業計画書を文章にしなければいけない。
しかも、よく考えて完璧に作成する必要がある。
では、なぜIPO(上場)のときには事業計画書が重要になるのだろうか。

IPO(上場)するときには、機関投資家へのプレゼンテーションだけでなく、記者会見も行う。
ここで、ある会社はA事業とB事業の2つがあったとする。
記者から、
「A事業の利益率はどれくらいですか。何人ぐらいの社員がその事業に配属されていて、これから増員しますか。」
と聞かれたときに、
「会社全体では利益率も社員数も分かるのですが、A事業単体では分かりません。」
と答えていたら、話にならない。

IPO(上場)するためには、自分の事業をよく分析して、それを相手に伝えることが必要になる。
その説明資料が、事業計画書になる。
先ほどの会社であれば、事業はA事業とB事業に分かれる。
A事業の売上と属する社員とその責任者(部長)をまずは決める。
これで、A事業の利益率が計算できる。
さらに、B事業も同じことを行う。

A事業にも、B事業にも属さない社員と経費は本社機能と考える。
さらに、A事業とB事業の業務を横断的にチェックする人も雇う。
この人を内部監査人と呼ぶが、上場するときには最低1人はいなくてはいけない。
この人の人件費も本社機能となる。
A事業とB事業と本社機能を合算すると会社全体の金額に一致する。
これで、やっと先ほどの記者の質問に答えることができる。
つまり、事業計画書を作ることで、やっとそれぞれの事業が本当に儲かっているのか知ることができる。

IPO(上場)したときに集めたお金を、儲からない事業で使っても意味がない。
やはり、儲かっている事業を探して、そこにお金を集中させるべき。

未公会社でも、事業ごとに子会社を作っている社長たちがいる。
彼らは、直感的に、事業ごとに利益率を計算することが重要なことを知っているのだ。
それぞれの会社に属する社員がやるべきこともハッキリするし、曖昧にもならない。
もし、儲からなくなった会社があれば、つぶしていく。
ただ、IPO(上場)しようとする会社は、そういうわけにはいかない。
関係会社や子会社は理由がなければ、1つの会社に統一することが前提。
事業ごとに経理ができないようでは、IPO(上場)は難しいだろう。

では、ここで事業計画書が間違っていたら、どんなことになるだろうか。
新しい事業計画書に合わせて、売上と経費の付け方をすべて見直す必要が出てくる。
過去の経費もすべて拾いなおして、経理をやり直すことになる。
もちろん、監査法人との話し合いにもなるが、相当大変な作業だ。
しかも、指標もすべて変わるため、IPO(上場)するために作成していた資料も大幅に修正。

さらに、最大の問題は、事業の利益率を知らずにお金を使ってきたことだ。
経営判断を間違っていたかもしれないのだ。
こんな会社の株価を証券会社も高く売りたいとは思わないはずだ。

(監修 公認会計士 青木寿幸)

投稿又は更新日時:2007年01月29日 09:38


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