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■ 自分では上場申請せずにIPOする

今の時代、自分の会社を子供に事業承継させたいと考える社長は少なくなった。
50年の歴史を持つ会社であっても、5年後にどうなっているか分からない。
単純に、子供に会社を事業承継させたことで倒産すれば、子供も社員も路頭に迷う。
それならば、もっと経営が上手な人たちに会社は売ってしまい、お金を子供に相続させた方がよい。

これは、会社ではなく、土地などの不動産でも同じことが言える。
代々先祖から受け継いだ自宅を一生懸命、親が守って住んできた。
これを子供に相続させるために遺言書も書く。
会計事務所に相談して、相続税の対策もバッチリ行う。

実際に、両親ともに亡くなり、子供がその家を相続する。
対策も万全で、親族間でも争いもなく、税金も無事、納めることができた。
ここまでが、今までの相続。

ところが、自宅を相続した子供は、その土地をすぐに売ってしまう。
そのお金で、自分の好きな場所に自宅を建てなおす。
先祖代々の土地を守ることが自分の生活を豊かにすると考えていない。

地元よりも、子供の通う学校の近く、仕事場の近く、生活しやすい都心をより重要だと考える。
悪いことではない。
それぞれの重要だと思う価値観が大きく変わってきた。
自分の人生は1度きり、昔に縛られるよりは、よりよい未来のために意思決定すべきだ。

同じ事が、会社の事業承継にも当てはまる。
子供がサラリーマンだったり、他の会社を経営していて、親の会社には興味がない。
社長である親も、一緒に住んでもいない子供と事業承継の話をするタイミングがない。
そこで、子供に固執せずに、会社と社員にとって、最もよい事業承継を考える社長が増えた。

その1つの大きな流れがM&A。
特に、未公開会社の株式を上場会社の株式と交換するという方法が多い。

上場会社にとっては、

1.自分の株式を発行するだけで、一切のお金がいらない
2.倒産しそうな会社ではなく、黒字で順調な会社を買うことで、ノウハウがすぐに手に入る
3.グループ全体の売上と利益が増えるため、株価が上がる

というメリットがある。
未公開会社にとっては、

1.社長は、交換された上場会社の株式を証券市場で売ることでお金を手に入れ、相続で困らない
2.社長は親会社の株主にもなるため発言権もあり、会長職として残ることも多い
3.将来は上場会社からプロの社長が派遣され、資本も増え、社員にとって安定した会社に変わる

というメリットがある。

これによって、お互いの利害が一致する。
つまり、友好的なM&Aと言える。
これなら、上場会社にとっても、買収した後に未公開会社の社長に協力してもらうことができる。

子供に事業承継させなくてもよいと考えるならば、上場会社へのM&Aを真剣に考えてみてはどうだろう。
と言うのも、M&Aの売り手側はタイミングをよく見極めてやるべきだからだ。
つまり、自分の会社の売上と利益が最高の時期に売ることで、交換してもらえる株式の数が多くなる。
その後の発言力を強め、相続のためのお金も増える。
しかも、高値で買った子会社は大事にするので、社員のためにもなる。

もし、社長の体調が悪くなってから売り急げば、足元を見られる。
上場会社から見ても社長のノウハウが手に入らない。
そのときの会社の業績が悪ければ、交換される株式の数も少なくなる。

子供に会社を事業承継しないことを決めたとしても、相続対策はできるだけ早い時期からやるべきという原則は変わらない。

(監修 公認会計士 青木寿幸)

投稿又は更新日時:2007年04月01日 18:22


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