■ IPOのためには節税が絶対に大事
IPO(上場)するために、できるだけ利益を増やそうと考える。
利益が大きくなれば、支払う税金も多くなる。
それを前提に、銀行もお金を貸してくれる。
そのお金を投資することで、さらに事業を拡大することができる。
拡大が成功すれば、利益もより大きくなる。
これに比例して多くの税金を支払い、さらにお金を借りて、最後にはIPO(上場)する。
この考え方は、正しいのだろうか。
確かに、ほとんどの部分で当たっている。
たった1つ、「利益に比例して、支払う税金も増える」という部分だけが間違っている。
未公開会社が決算書を作る一番の目的は、会社がどれだけ儲かっているのかを自分が知るため。
それ以外に、税金の計算や銀行からの借入のため、というのも大きな理由だろう。
ところが、IPO(上場)を目指すと、いきなり決算書を作る一番の目的が、投資家にどれだけ儲かっているかを知らせるためになる。
ただ、IPOを目指すために作る決算書であっても、会計ルールはすでに決められているので、それに従えばよいだけ。
この決算書の税引前の利益をもとに、「税金を算出する利益」を計算する。
「税金を算出する利益」に法人税率を掛け合わせて、税金を計算する。
「決算書の最終利益 = 決算書の税引前利益 − 税金」
となる。
さらに、もう1つ覚えておく計算式がある。
それは、「決算書の税引前利益」と「儲かった現金(キャッシュフロー)」も違うということだ。
「キャッシュフロー = 決算書の税引前利益 − 税金 + 減価償却費」
となる。
もちろん、この式は簡便的なもので、本当はもっと細かい項目が増える。
ただ、それほど細かな式を覚えても意味がない。
今や、すばらしい会計ソフトが、勝手に計算してくれるからだ。
それよりも、IPO(上場)を目指す会社にとって重要なことは、「決算書の最終利益」と「キャッシュフロー」の2つを大きくすること。
「決算書の最終利益」が大きければ、主幹事になりたい証券会社も多くなり、IPO(上場)のときの株価も高くなる。
「キャッシュフロー」も大きければ、事業を速く拡大できる。
これは、どちらの計算式を見ても分かるが、税金を小さくすることで達成できるはずだ。
つまり、IPO(上場)するためには節税することが絶対に不可欠になる。
実際に、日本では節税は悪いもののように考えている人たちがいる。
でも、世界ではそんなことはない。
もちろん、脱税することは犯罪になるし、絶対にやってはいけない。
一方、節税は推奨している国が多いし、すべての会社が努力している。
アメリカの会社が日本に進出して、儲かったとする。
子会社であっても、支店であっても、日本で儲かった利益に対して節税しなければ、たくさん税金を日本の税務署に支払うことになる。
アメリカに本社があれば、日本での決算書の税引前利益は、本社の決算書の税引前利益と合算される。
その税引前利益を調整した利益から算出された税金をアメリカに納める。
ここで実は、日本で支払った税金を引くことができるのだ。
アメリカとすれば、日本で税金をたくさん支払うぐらいなら、本社の社員の給料や寄付に回して欲しいと考えるのが当然だろう。
それで、アメリカの景気がよくなれば、税金も増える。
日本でも、世界に進出している会社では、税理士を何人も雇い、さらに有名な国際税務の会計事務所にコンサルティング料を支払う。
毎日、世界の税法を研究して、節税する努力をしている。
ここでよく考えて欲しい。
10億円の売上がある会社の決算書の最終利益が5千万円だとする。
5%の利益率の会社ということ。
この会社が、今よりもたったの500万円の節税ができたとすれば、最終利益は5,500万円になる。
この500万円に対応する売上は、1億円にもなる。
つまり、節税することは売上を上げたことと一緒なのだ。
IPO(上場)を目指すから節税は必要ないと考えるのは間違っている。
世界に進出する東証一部の上場会社だけが節税すればよいというのも間違っている。
日本に進出したアメリカの会社が節税しているのに、もっともよく日本の税法を知っている日本の会社がやらないのはおかしいだろう。
絶対に節税すべきだ。
それによって、「決算書の最終利益」と「キャッシュフロー」を最大にして、IPO(上場)しよう。
(監修 公認会計士 青木寿幸)
投稿又は更新日時:2007年03月07日 10:26
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