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■ IPOの直前には必ず税務調査が入る

IPO(上場)の直前になると、税務署から電話がかかってくる。
「税務調査に入りたいんですが。」
「今、IPO(上場)の準備で忙しくて、調査をもう少し延期してくれませんか?」
と答えても、
「そちらの状況もよく分かっていますが、仕事ですからお願いします。」
と押し切られる。
これは、税務署の職員にも転勤や異動があるため、その中で調査を終わらせたいという気持ちがある。
少しなら延期できても、長期間の延期はできない。

調査が入る理由は簡単だ。
まず、資本政策によってIPO(上場)の直前期には資本金が大幅に増える。
役員も増員されて、監査役も交代する。
子会社や関連会社も整理される。
法務局から税務署にこのデータが送られるので、何かやっているなと感ずかれる。

次に、IPO(上場)の直前には資本金が大きくなることで、事業も急激に拡大する。
利益もできるだけ出して、税金もたくさん支払う。
投資家に儲かっているというアピールをする。
これは税務署に対しても、儲かっているというアピールにもなるのだ。

税務署としては、ちょっと見に行きたくなるのが心情だろう。

一方、IPO(上場)を目指している会社の社長は、税務調査を軽く考えている。
監査法人が決算書をチェックしているから、問題はないはずだ。
それでも、うるさいことを言われたら、儲かっているんだから税金なんて支払えばいい。
証券取引所が出している上場の審査基準に税金のことなんて書いてない。

そして実際に、3日間もかけて調査官が調べていく。
社長は、最初に挨拶して、後は経理部長に一任してしまう。
それよりも、IPO(上場)のために、証券会社や監査法人の担当者などとのミーティングの方が大事。

ところが、1週間後に、
「取引先に支払っている手数料を交際費とみなします。
ちょっと、金額が大きいこともあり、重加算税もつけます。」
と回答をもらって、事態は一変する。

重加算税の場合には、監査法人が無限定適正の監査意見を出せないと言い出したのだ。
無限定適正とは、会社の会計処理にまったく問題がないというお墨付きをつけるもの。
これが過去2期分ないと上場の審査には通らない。
(一部、過去2年前であれば限定付意見でもよいのだが、現実的には無理だろう。)

このときになって、社長が慌てふためく。
「取引先に支払った手数料は適正な金額で、交際費になるはずがない。」
確かに、契約書はある。
ただ、具体的に、どのような仕事に対してどれだけ支払ったのか詳細がない。

取引先側は、手数料として売上で計上しているので、会計上も税務上もまったく問題がない。
取引先の担当者はすでに辞めて転職しているため、連絡はとれない。
売上を飛ばしているなんて疑いがかけられたら、取引先も巻き込まれてしまう。
あまり、かかわりになりたくないような雰囲気。

今から、具体的に新しい契約書を作ることは許さないと、監査法人が目を光らせる。
後は、税務署と交渉して、重加算税だけは取り下げてもらうように交渉するしかない。
調査での社長の態度もあり、あまり税務署とも関係が良いとは言えない。

結局、重加算税として認定されて、2年間も上場が遅れてしまった。
もともと、最初から決算書とは別に、税務申告書として正しいのかという検討もするべきだ。
IPO(上場)の直前に税務調査が絶対にはいるのだから、どの部分が指摘されそうなのかも事前に知っておくべき。

事前に準備して、税務署からの質問にもちゃんと答えることができれば、心象も悪くないので重加算税にはならないだろう。

IPO(上場)の審査基準をクリアするためには、税務署の対応も必要なのだ。

(監修 公認会計士 青木寿幸)

投稿又は更新日時:2007年02月19日 09:48


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