株式会社日本中央会計事務所/日本中央税理士法人
運営管理者:公認会計士 青木 寿幸
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「贈与税は相続税よりも税率が高い」というのは常識です。
もし、贈与税の方が安ければ、生前にすべての財産を子供にあげてしまえば相続税がゼロになってしまうからです。
そのため、贈与税よりも相続税を支払う人の方が圧倒的に多いのです。
人は会社で働いて給料をもらうか、個人事業主として収入を受け取ります。
どちらにしても、お金が入れば、それに対応する所得税を支払うのです。
株式に投資して儲かった人は、キャピタルゲインに所得税がかかります。
税引後のお金を生活費や旅行などの趣味に使って、残ったお金が相続財産になります。
自分の会社を設立した社長が給料を安く抑えても、利益に対して法人税がかかります。
税引後のお金が会社に残れば、その株式の価値が上がり、それが相続財産になるのです。
このように考えると、使わないで貯まったお金に相続税をかけているのです。
政府も、余ったお金からの税金はとりやすいと考えます。
「子供は税金を支払った後に残った財産を相続すればよい」というのが、今までとってきた政策の大前提でした。
ところが、突然、税務署は大きく方向転換をしたのです。
子供に財産を贈与することを前提にした相続時精算課税制度というものを作りました。
制度自体の仕組みは簡単です。
例えば、4年間に渡って子供に現金を1,000万円ずつ贈与したとします。
1年目、2年目は贈与税はゼロです。
3年目は累計で2,500万円を超えるため、(3,000万円−2,500万円)×20%=100万円の贈与税を子供が支払います。 4年目は、すでに3年目に2,500万円を超えているため、1,000万円×20%=200万円の贈与税を子供が支払うことになるのです。
つまり、この制度を選択すれば、贈与税は最高20%に変わります。
だからこそ、生前に子供へ財産を贈与することを推奨していると言えるのです。
もちろん、贈与された子供は、その財産をすぐに自由に使うことができます。
ただし、ここでちょっと考えてください。
相続税は累進課税と言って、たくさんの相続財産をもらう人ほど、税率は高いはずです。
最低が10%で、段階的に15%、20%、30%、40%となり、最高で50%です。
もし、20%ですむならば、30%以上の税金がかかる人たちは、すべて生前に財産を贈与すればよくなります。
そのため、この制度は、贈与税を支払うだけで終わりにはなりません。
最後に、贈与税を精算するので、相続時精算課税制度と呼ぶのです。
「結局、精算するならば、節税にはならないのでは?」と考えてはいけません。
ここからが、重要です。
ここからは、相続時精算課税制度を選択すると仮定して解説します。
相続が発生する5年前に1億円の価値の土地を贈与すると、
(1億円−2,500万円)×20%=1,500万円
の税金が発生します。
不動産の価値は路線価(毎年8月に国税庁から発表)を基に計算します。
相続税を計算する5年後には、土地の路線価が2億円に上がりました。
普通に考えれば、相続が発生した時点の2億円で相続税を計算します。
しかし、相続時精算課税制度を利用していると、贈与した時点の路線価1億円を使うのです。
相続税が30%の人であれば、単純に3,000万円もの節税になります。
これで喜んではいけません。
5年後に、土地の路線価が5,000万円に下がっていたら、どうでしょう。
それでも、土地は1億円と評価するため、1,500万円の増税になります。
と言うことは、将来、絶対に価値が上がる財産しか贈与できないことになります。
今の世の中で、絶対に価値が上がるものなど、あるでしょうか。
1つだけあります。
それは、未公開会社の株式です。
「会社が赤字になれば、価値が下がるのでは」と思いましたか。
実は、未公開会社の株式の価値は絶対に下がりません。
会社が儲かっていれば、株式の価値は自動的に上がります。
毎年、税引後の利益が株式の価値に加算されていきます。
贈与したあとに、どんなに評価が高くなっても相続税の計算では無視されます。
会社が赤字であれば、社長が会社にお金を貸付けます。
この貸付を放棄(債務免除)すれば、赤字を消すことができます。
債務免除は、お金を返してもらわないと通知するだけでよいのです。
お金を社長が持っていれば、相続税がかかります。
このお金も会社にあげることになるため、さらに相続税の対象になる財産は減ります。
社長はそのままで、株式だけを子供に贈与します。
これで、財産を合法的に子供に移転できます。
さらに、社長の給料を減らして、株主である子供に配当を出すこともできます。
贈与税も相続税もゼロで、お金が子供に移ります。
ただ、配当は利益に対して法人税40%を支払った後で、かつ受け取る子供に所得税もかかります。
必ず、税金のシミュレーションを行ってから配当金額を決めてください。
なお、相続時精算課税制度を利用して贈与するときには、税法に従った株価算定を行わなければいけません。
相続税だけ安くなっても、成功ではありません。
法人税、所得税も合算した全体で節税できなければ意味がありません。
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