株式会社日本中央会計事務所/日本中央税理士法人
運営管理者:公認会計士 青木 寿幸
〒105-0003 東京都港区西新橋2-6-2 ザイマックス西新橋ビル3F
あなたが上場する目的は、なんですか。
「証券市場から多くのお金を集めて、事業に投資して拡大すること」
あなたは、お金さえあれば、今よりもっと儲ける自信があるはずです。
このとき、株価が高い会社ほど、より多くのお金を集めることができます。
上場会社であれば、投資家が売買する株価は、自動的に証券市場で決まります。
一方、あなたの会社がまだ未公開であれば、売買する市場がないため、株価を自分で計算しなければなりません。
では、現在は未公開である、あなたの会社の株価を計算する目的はなんでしょうか。
「公開する前に、より多くのお金を集めれば、上場しやすくなる」
もともと、会社とは株式を発行して、お金を集めるために作られた資本主義の制度です。
上場会社、未公開会社という区分は関係ありません。
未公開会社でも、株式を発行して、お金を集めることができるのです。
どんな事業でも、儲かってくれば事務所も大きくして、社員の数も増やしたいと考えます。
成長が速い会社ほど、支出も急激に増えていきます。
そして、毎月の資金繰りが大変になると、安い金利で銀行からお金を借りるのです。
ところが、借入金が増えていくと突然、借りることができなくなります。
銀行は、内部の規定で、お金を貸し付ける基準を作っています。
その基準の1つに自己資本比率があります。
簡単に言えば、資本金1,000万円の会社に、銀行は10億円を貸し付けることができません。
10億円借りたいなら、もっと自己資金(資本金)を増やす必要があるのです。
もちろん、担保価値がある土地を持っていたり、お金持ちが連帯保証人になってくれれば別です。
まぁ、そんな会社は少ないでしょう。
そこで、資本金を増やす方法を探し始めるのです。
未公開会社の社長は、お金持ちではありません。
多くの給料をもらっていても、高い所得税がかかっています。
手持ちのお金だけで、何億円もあるはずがありません。
そこで、ベンチャーキャピタル、取引先、知り合いのお金持ちに出資の話を持っていくのです。
彼らがお金を出してくれれば、その何倍ものお金を銀行から借りることができます。
お金さえあれば事業の拡大が速くなり、短期間で上場までたどり着けます。
ここで、ちょっと考えてください。 会社の資本金を増やすことは、他人があなたの会社の株主になることです。 ただ、持株比率が51%以上の株主にはなりません。 株式である以上、元本が返ってくる保証もありません。 では、彼らは、なんのために未公開会社などに投資しようと思うのでしょうか。
と考えているからです。
どうやって、儲かるつもりなのでしょうか。
彼らは、株式の配当で儲かるつもりはありません。
上場を目指す未公開会社は、配当するお金があれば、事業に再投資すべきです。
配当することで上場が遅れたら、なんのためにお金を集めたのか、分かりません。
彼らは、あなたの会社が上場して、自分の株式の価値が何倍にもなり、それを証券市場で自由に売ることを狙っているのです。
ということは、彼らは儲かることに納得すれば、お金を出します。
そのため、今の株価と上場したときの株価を彼らに見せるのです。
ただ、1人でも信頼を裏切れば、他の投資家もお金を出してくれません。
上場するときにも、足かせになります。
そこで、統一された理論に基づいた株式の評価が必要になります。
では、どうすれば、プロの投資家は納得するのでしょうか。
プロの投資家である以上、リスクがあることは理解しています。
投資した会社が上場できないというリスクです。
重要なのは、このリスクと利益が対応することです。
下の図を見てください。
あなたが創業するときに発行した株数は200株だとします。
まず、1回目の増資で1,000万円を募集すると、A投資家がお金を出したいと言ってきました。
この時点で1株50万円と評価すれば、A投資家は20株もらえることになります。
増資した後の株数は220株なので、20株÷220株=9%の持株比率です。
次に、2回目の増資でも1,000万円を募集すると、B投資家がお金を出したいと言ってきました。
この時点で1株100万円と評価すれば、B投資家は10株もらえることになります。
増資した後の株数は230株なので、10株÷230株=4.3%の持株比率になります。
さらに、上場するときには証券市場からお金を集めるので、新たに170株を発行します。
この段階で会社が発行している総株数は400株となります。
もし、この会社の証券市場での時価総額が20億円となれば、1株500万円にもなるのです。
A投資家は、(500万円−50万円)×20株=9,000万円が利益となります。
これは、投資した金額の9倍です。
B投資家は、(500万円−100万円)×10株=4,000万円が利益となります。
これは、投資した金額の4倍です。
A投資家がお金を出すときには、B投資家よりも上場しないリスクは高いと言えます。
その分だけ、A投資家の利回りは高くなっています。
ここで、時価総額20億円とは、どのように決まるのでしょうか。
(他にもPBRやROE、ROAなどの指標もありますが、最も分かりやすく、簡単なPERだけを理解できれば十分です。)
PERはその会社の特殊性、業種、経済状況によって変わります。
例えば、IT企業であれば、30倍ぐらいです。
つまり、IT企業の利益が1億円であれば、時価総額は30億円になります。
もちろん、このIT企業が特別な技術を持っていたり、有名企業と提携したりすれば、より高い数字になります。
一方、製造業であれば、20倍ぐらいです。
製造業の利益が1億円であれば、時価総額は20億円になります。
IT企業は、アイデアだけでも1億円の利益が5億円になります。
すると、利益に比例して株価が上がり、株主は儲かります。
一方、製造業は1億円の利益を5倍にするためには、新しい工場を作らなければなりません。
時間もかかるだけでなく莫大な投資も必要です。
このため、IT企業はリスクが高い製造業よりも人気があり、PERが自然と高くなります。
このPERは20倍から30倍ぐらいが妥当です。
もちろん、PERが50倍、100倍という上場会社もありますが、それはたまたまです。
そのような上場会社でも、時間が経つにつれて事業や技術がマネされて、PERは20倍から30倍に下がってきます。
この時価総額が決まれば、株価は簡単に計算できます。
この1株あたりの株価よりも、未公開のときに増資する株価が安ければ、投資家は儲かるのです。
ここまで、読んだ方は分かったと思いますが、この株価を計算するときに絶対に守るべきことがあるのです。
上場する審査で、 「なぜ、この株価で増資したのか?」 という理由を絶対に聞かれます。
異常に安い株価で増資している人がいれば、おかしいとなるのです。
親族だからといって安い株価で増資させれば、他の株主は損をします。
上場しても、株主の利益を守らない会社と疑われてしまいます。
そんな会社の株価が、株式市場で高くなるはずがありません。
そのためにも、だれもが納得する第三者の株式評価が必要なのです。
株価は、だれが計算するのでしょうか。
増資する投資家ではありません。
監査法人、証券会社は法律で禁止されています。
株式を発行する会社が計算するしかないのです。
ただ、会社が計算した株価が後で間違っていたとなれば大変です。
増資するときには、法務局へ登記をします。
他の投資家が別の株価で増資した後に、間違いを直すことは不可能です。
専門家である第三者に依頼して、正確な株価を計算する必要があります。
さらに、株価を正確に計算するだけで、すべての問題が解決するわけではありません。
どの時点で、いくらの株価で増資させるかで、あなたの会社の命運が左右されるのです。
これを決定するのが資本政策です。
会社関係者以外の株主は投資家でした。
投資家は、会社の経営に興味はありません。
どれだけ自分が儲かるかだけが重要です。
そのため、自分が保有する持株比率には感心がありません。
10%の支配権が欲しい、20%の支配権が欲しいなどとは言いません。
会社が増資を繰り返せば、1人の投資家の支配権はドンドン小さくなります。
ただ、投資家は、どれだけ儲かるのかを聞きたいだけです。
先ほどのA投資家も、B投資家も1,000万円を出すことは決めていました。
あくまで、株式の評価によって、保有する株数が決まってくるのです。
株価が安ければ、投資家の持株比率は自動的に高くなります。
一方、あなたの会社にとって、持株比率は大変重要なことです。
上場したときに、できるかぎり安定株主は多い方がよいのです。
ただ、未公開のときに増資してくれた投資家は、上場すれば、すべて売ってしまいます。
他人にはそれぞれの事情があります。
ベンチャーキャピタルが、 「上場しても売らない」 と言っていたとしても、その後ろに投資家がいるのです。
その投資家の意思が変われば、すぐに方向転換します。
信用できるのは、社長や役員など、会社の関係者だけだと考えるべきです。
上場の目的を覚えていますか?
上場した後に株価を高くして、さらに増資することで、より多くのお金を証券市場から集めることでした。
集めれば、事業を拡大でき、絶対に儲けることができます。
お金があるほど成功するのです。
それが資本主義です。
未公開のときの増資で、株価が高ければ、自動的に投資家の持株比率は低くなります。
そのことが、将来、証券市場でより多くのお金を集めることにつながります。
より多くのお金を効率よく集める。
これを成功させることが資本政策であり、株価の計算なのです。
そのためにも、投資家に高い株価である理由を納得させる資料が必要です。
それは、第三者である専門家だからこそ、できることなのです。
重要なことは、だれが株価を理論的に説明する資料を作成したかということです。
責任を負えない人が計算した資料は、価値がありません。
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