株式会社日本中央会計事務所/日本中央税理士法人
運営管理者:公認会計士 青木 寿幸
〒105-0003 東京都港区西新橋2-6-2 ザイマックス西新橋ビル3F
「自分が生きているうちに、会社の株式を子供に贈与したい。ただ、贈与税がかからない110万円以内にするため、株式の評価をお願いしたい」
という人が、私の会社(会計事務所)にやってきます。
いまだに、会社の株式を子供に毎年、少しずつ贈与している人たちがいるのです。
しかも、「子供とは十分、話し合いをしていますか」と聞いても、
「一緒に働いているし、長男が会社を継ぐのが当たり前だ」
と答えるのです。
こんな古い考え方で、本当に事業承継が成功するのでしょうか。
会社を子供に譲るときに支払う税金は、少ない方がよいに決まっています。
長男が事業を継いでくれれば、親として、うれしい気持ちも分かります。
子供に会社を継がせることで、事業が失敗する可能性が大きいならばやめるべきです。
それでも強行することは、社長である、あなたのわがままであり、子供にとっても社員にとっても大きな迷惑です。
一生懸命やったのに、社員から陰口を言われ、子供にも恨まれるのは悲しいことです。
では、どうすれば、理想的な事業承継ができるのでしょうか。
まず、上場会社の場合を考えてみましょう。
日本の上場会社では、ほとんどが社内の役員の中から社長を決めます。
この役員は厳しい競争を勝ち抜いてきた優秀な人物です。
しかも、そんな役員が何人もいるのです。
この役員全員が社長になる素質を持っています。
ただ、社長になるのは1人です。
では、どうやって社長を決めるのでしょうか。
派閥、創業者一族、年功序列、好き嫌いという理由で、社長を決めているのでしょうか。
いやいや、そんなことで社長を決めている上場会社は倒産します。
技術研究にお金を集中させたい会社は、技術部門の役員を社長にします。
営業拠点を急激に増やす計画がある会社は、営業担当の役員が社長になります。
経費を削減するためにリストラを断行する会社は、財務部門の役員が社長になるのです。
明日の会社の利益を最大にできる人が社長になります。
あなたが、その上場会社の株主であれば、当然だと思うはずです。
では、上場していない未公開会社はどうでしょうか。
ほとんどの未公開会社が、役員ではなく家族の中から次の社長を決めます。
しかも、長男が圧倒的に多いのです。
ただ、未公開会社こそ、社長に能力がなければ、すぐに倒産です。
実際、社長が長男に代わったとたんに、経営が悪化する未公開会社をよく見ます。
家族以外でも能力のある社員がいれば、その人物が社長になるべきです。
まず、株主は配当がもらえます。
さらに、監視役として非常勤の役員になることで報酬もとれます。
つまり、株主とは、純粋に会社の利益をもらう人なのです。
あなたが投資用の不動産を持っているならば、それと同じです。
株式とは、毎年、利益をもたらす財産です。
この財産を子供に渡すことが、事業承継なのです。
では、社長とは別に株主になる子供を決めて、贈与すればよいのでしょうか。
相続税を支払いたくない人たちは、生前に贈与しようと考えます。
それを防ぐため、贈与税は相続税よりも高い税率になっています。
単純に株式を贈与すれば、多くの税金がかかります。
この税金に、すべての利益が使われるのであれば、事業承継は失敗です。
そこで、株式の評価を下げる対策が必要になります。
未公開会社の株主は何人がよいと思いますか?
もちろん、1人がよいに決まっています。
会社の意思決定も速く、株主同士が争うこともありません。
ただ、株式が利益を生む財産ならば、複数の子供にあげることもあります。
例えば、飲食店であれば、食材を仕入れて料理を作る、社員の教育、インターネットでの広告などの事業に分けることができます。
もともと、事業を継ぐ人たちには、あなたほど能力がないかもしれません。
事業を細かくして、それぞれの社長を選ぶことで、成功しやすくなるはずです。
もちろん、複数の会社の社長が同じでも、問題はありません。
そして、それぞれの会社の株式を、子供に贈与していきます。
ここで、贈与するときの株式の評価方法は、法律で決められています。
勝手に評価されてしまうと、税金が不公平になるからです。
ただし、いろいろな要素を組み合わせて、評価します。
まず、会社の数が増えれば、この要素を変える選択肢ができます。
さらに、利益という要素は株価に大きな影響を与えます。
事業を分解したことで、自動的に1社あたりの利益が減って、株価は下がります。
贈与できる低い株価になった会社から、一気に実行していきます。
すばらしい経営の能力を持つ社長でも、事業承継では理性を失うことがよくあります。
事業承継の専門家の助言で、冷静な判断を取り戻してください。
会社とは、プロセスが重要であっても生き残れません。
結果がすべてなのです。
社長は結果が出せる人がやるべきです。
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