株式会社日本中央会計事務所/日本中央税理士法人
運営管理者:公認会計士 青木 寿幸
〒105-0003 東京都港区西新橋2-6-2 ザイマックス西新橋ビル3F
「M&Aが失敗するのは、買う会社のことをよく調べなかったからだ」
という考え方は正しいでしょうか。
M&Aは結婚と同じです。
離婚してしまうカップルは、片方だけが一方的に悪いのでしょうか。
相手のことを理解するだけではなく、自分のこともよく知らないと、お互いにすれ違いが起こります。
こんなはずではなかったと、相手も思っているものです。
M&Aは、相手の会社の株式を評価することから始まります。
下記が、買うことを検討している会社の決算書とします。
この営業利益からだけ試算すると、株式の評価は6,000万円になります。
(ここでは、単純に営業利益の3倍が株式の評価になると仮定します。)
これだけで、M&Aの株価が決まるわけではありません。
決算書の数字を置き換えることで、シナジー効果(相乗効果)を足していきます。
@ 人件費が減る
M&Aの後には、役員報酬が消えます。
その代わりに実績がある店長を給料1,000万円で派遣します。
さらに週1回、本社の管理者がお店を見回るため、その経費を500万円と見積もりました。
A 大量仕入れによる効果
食材の仕入先を自分の取引先にまとめることで、売上原価を1割削減できると見込みます。
これで、P会社の営業利益は下記のように修正されます。
この営業利益から試算した株式の評価は、1億4,400万円となります。
一気に、2倍になりました。
さらに、シナジー効果の追加は続きます。
B 自分の会社の利益も増える
取引先をまとめることで、あなたの会社の食材の売上原価も削減できます。
その金額が毎年2,000万円とすれば、これも加味した株式の評価は2億400万円となります。
これを図にしてみましょう。
最初は、「買い側の評価金額<売り側の評価金額」となるのが普通です。
売り側は自分の会社がよく見え、買い側はできるだけ安く買いたいと思うからです。
ただ、買い側はこのまま、交渉が決裂することを望んでいません。
もともと、M&Aが成功すれば、自分の利益につながると思っています。
だからこそ、時間とお金をかけて、他人の会社の株価を計算しているのです。
つまり、自分の評価金額を相手に押し付けて、ダメなら破談してもよいとは考えていません。
できるかぎり、売り側の評価金額に近づいて、M&Aを成功させようとします。
そこで、自分の評価金額に、シナジー効果を足していくのです。
先ほどの役員報酬や仕入れ金額が削減できれば、@、Aと評価金額が上がっていきます。
さらに、自分の会社の売上原価まで下がれば、Bのシナジー効果が足されて、売り側の評価金額を上回ることができます。
ここで、売り側は買い側の情報は知らないため、Bのシナジー効果は絶対に分かりません。
売り側で試算できるシナジー効果は、@とAだけです。
もちろん、高い金額で株式を買う理由はないので、売り側の評価金額で取引が成立します。
これで、売り側も買い側も儲かることになるはずです。
確かに、売り側は自分の意見が通って、お金をもらえば終わりです。
しかし、買い側はM&Aの後からが、本当の始まりです。
現実に、買ってみるとシナジー効果がなく、大損したと感じている人たちが多いのです。
ではなぜ、そんなことになってしまうのでしょうか。
理由は、結婚と同じです。
相手の情報は念入りに調べるが、自分のことには目を向けていないからです。
先ほどの例でも、買った会社が予想していたシナジー効果は出ませんでした。
新しい店長と本社からの管理者は決めました。
ただ、彼らは自分の会社のやり方を押し付けるだけです。
そのため、ノウハウを持った優秀な社員は不満を持ち、辞めていきました。
これでは、以前のような売上は達成できません。
役員報酬が削減できても、それ以上に利益は減りました。
また、自分の取引先に新しい仕入れを依頼すると、地域が広すぎて対応できないと言われました。
どうしても地域を広げるなら、追加の経費がかかります。
これでは、取引先をまとめても、売上原価は削減できません。
これらは、自分の会社のことをよく知らなかったから起こったことなのです。
ただ、自分自身を調査することは難しいものです。
そこで、専門家である第三者にM&Aを行う前に、自分の会社を調査してもらうのです。
そして、シナジー効果の本当の評価額を知るべきです。
目に見えないシナジー効果もあります。
これは、数字で評価することはできません。
ただ、それまで株価に追加して高値で交渉することは危険です。
M&Aの話はたくさんあります。
無理をして、高い金額で会社を買うことはやめましょう。
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